電通新入社員の過労死労災認定、高橋まつりさんの自殺で働きかたを考える

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ビリギャルの映画を観て、慶応という私学の雄に努力の末に入ったさやかに感動していたところに流れてきたのが、このとても苦しいニュース。

概要

広告大手の電通に勤務していた女性新入社員(当時24)が2015年末に自殺したのは長時間の過重労働が原因だったとして、労災が認められた。

亡くなったのは、入社1年目だった高橋まつりさん。高橋さんは東大文学部を卒業後、2015年4月に電通に入社。

代理人弁護士によると、10月以降に業務が大幅に増え、労基署が認定した高橋さんの時間外労働は約105時間にのぼった。

高橋さんは2015年12月25日、住んでいた都内の電通の女子寮で自殺。SNSで「死にたい」などのメッセージを同僚・友人らに送っていた。

過労死認定を受けた高橋まつりさんは、母子家庭で育ち、東京大学を卒業し、大企業中の大企業である電通に入社、その後一年も経たずに身を投げて自殺したのだという。

ビリギャル観た直後のカウンターパンチということもあり、陳腐な言葉だが、「大学が全てではない」ということを痛感させられる。

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過労死、電通だけが特別なのではない

電通という大企業中の大企業だからこそ大きなニュースとしてとりあげられたが、過労死に至らないまでも、同等の労働環境は珍しいものではない。

別サイトを見ると、高橋まつりさんの場合は月の残業時間が130時間とあった。

しかし、当人のTwitterを投稿した時間を見ると、それでは収まっていないというのがよくわかる。

(↑ 自殺の2週間前 早朝05:39

(↑ 自殺の1週間前 早朝04:01

始発の時間に帰ることや休日出社が常態化していたようだ。軽く200時間は超えてくるのではという気がする。

残業時間自慢をする気はないが、ぼくも社会人一年目はタイムカードベースで平均的に残業150時間を超えていた。(実際は200時間くらいいってたんじゃないかな)

でも、それでも社内では決して特別というわけではなかった。

過労死、自己責任と言ってはいけない

どんなに常軌を逸した労働環境でも、死なない人が多いから、数の論理でそちらが正しいとされる。「根性が足りないのだ、お前が弱いのだ」と。

また、高橋まつりさんのTwitterには、労働時間のみならず、パワハラ・セクハラについてのつぶやきもみられる。

これらも同じ構造。「みんなやられてるじゃないか、一緒じゃないか」と。

導き出される結論は、「わたしの我慢が足りないんだ」となり、自己責任のウソに絡めとられていく。

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過労死、そこにつながる同調圧力

さらに残酷なのは、被害者側が同属意識を持ってしまうこと。なぜならば、同属意識で慰めあわないと精神が持たないから。

「俺たち、かわいそうだけど、仲間だよね」と。

そして、レースから脱落し精神失調した人に最終的に投下される言葉は、「そんな辛いならやめちゃえばいいじゃん」。自殺した人には、「死ぬほど苦しかったなら逃げればよかったのに」

もっとひどい場合には、「他にも仕事があるのに辞めなかった。だから自己責任」

ハッキリ言おう。

精神を失調しているときは、他の選択肢など見えないのだ。

それでも、本当に自己責任なのだろうか?

過労死、「karoshi」で英語辞書にも載っている

2000年初頭、「karoshi」という単語がOxford English Dictionaryに登録された。「karoshi」とはもちろん、「過労死」のこと。

sushi、tempura、ukiyoe、geisya、そして、pokemon …

そういった日本文化を表現するものと同列に、日本の在りようを伝える言葉として「karoshi」が世界に通じてしまうのである。

とても悲しいことだと思う。

民法・刑法によるパワハラ・セクハラへの個人の責任追及

今回の件は過労死による労災認定で会社から保障が遺族に出ると思うけど、自殺の原因の一端となったであろう上司のパワハラやセクハラは、民法・刑法ともに個人の責任は追求されないのだろうか。

もし追求され得ると判断された場合、リアルタイムでハラスメントを受けている人の声はきちんと掬われるのだろうか。また、どの程度まで掬われるのだろうか。

そのパワハラやセクハラは、あくまで個人の感情からくるものなのだろうか。それとも、会社の業務環境がそうさせたのだろうか。

とてもむずかしい問題だと思う。

自殺に向かう性差

個人的感覚として、女性はSNSや友人関係に苦しさを漏らしていくけれど、男性はため込んで閾値を超えた瞬間にパキンと心が折れて自殺する傾向がある気がする。

その衝動性が男性の自殺数の多さに繋がっているのではないか。

また過去記事では、生物学的に男性の方が自殺を決行しやすいのではということを書いた。

過去記事 ↓↓↓

4人に1人「本気で自殺したい」日本財団が4万人調査
四人に一人が「本気で」自殺したい社会らしいです。 4人に1人「本気で自殺したい」 日本財団が4万人調査 未来を担う二十代において……

高橋まつりさんは、周囲に「もう死にたい」と漏らしていたのだという。つまり、助けてというサインを出し続けていた。

「もう限界なのでは…」と気がついている人が、まわりにはたくさんいたんじゃないかと思う。そして、助けようとしたひともいたのだと思う。

それでも、とめることはできなかった。

Twitterの投稿が異例のスピード認定の要因に

Twitterのつぶやきを論拠に異例の速さで過労死認定されたというのは興味深い。SNSが過労状態の監視装置にもなり得るということ。

企業の良心に任せて労働環境の改善をはかるのが最も幸せなかたちだとは思うが、労基署にサイバー管理部を設けて、SNSをチェックするというのも過労死を減らす方法のひとつかもしれない。

SNSをチェックされるのは嫌かもしれないけれど、自殺が増えることで暗い世の中になるよりは幾分マシではないだろうか。

なんのために働くのか

高橋まつりさんのこのツイートが心に響く。

生きるために働いているのか、働くために生きているのか、わからなくなっていたんだと思う。

それでもなんとか踏みとどまろうと、生きようとして、「ここからが人生」と表明しようとした。

そんな悲しい思いが溢れているツイートではないかと思う。過労死と労災の認定がおりてほんとうに良かった。ご冥福をお祈りいたします。

本件が、はたらきかたを考える大きな議論となることを望みます。

PS

高橋まつりさんのTwitterアカウントが残っていることに、不思議な感動というか、美しいものを見たような感覚を覚えた。

本人が亡くなっても、インターネットの世界には記録が残り、故人の感情が保存され、参照し続けられていく。

なんて綺麗な空間なのだろうかと思う。

最後に、はたらきかたについて肩の力がほわっと抜ける本を紹介。

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