DeNA運営のWelqにおけるデマ・パクリ記事炎上を発端として、いわゆるキュレーションサイト()界隈に強烈な浄化作用が働いています。手塚治虫の「火の鳥」の再生を見守るような心境です。
『この世界の片隅に』で「建物疎開」という施策があった。建物を破壊して、空襲の際の延焼を防ぐというもの。
DeNAのサイト群閉鎖を見てそれを思い出した。残念ながら本丸MERYにも火が着いちゃってるみたいだけど。— ずかん@シングルファザー (@suzukizukan) 2016年12月2日
進行及び顛末についてはネット上で大いに話題になっていますのでそちらにおまかせして、「キュレーション」という言葉の本来の意味について見直してみなければいけないな、と感じています。
事実、ネット界隈でのキュレーションという言葉の信用度はここ数年で失われつつありました。今回の騒動でトドメを刺され、もはや「パクり」と同義にまでおとしめられてしまった感があります。
とても悲しいことです。
誤解なきよう、キュレーションの本来の意味を書いておきます。
目次
キュレーションとは?
キュレーションの本来の意味は、キュレーターの定義を見ればわかります。
キュレーター
博物館(美術館含む)、図書館、公文書館のような資料蓄積型文化施設において、施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う専門職、管理職を指す。
(Wikipedia)
まず「キュレーター」という人称ができて、そこから可逆的に派生したのが「キュレーション」という言葉です。知識の寄せ集めのWikipediaですが、そのとおりではないかと。
そもそもは、美術館や博物館、図書館などの文化施設の文脈で用いられるべき言葉です。
まず定義に書いてある「鑑定や研究」についてですが、クラウドソーシングサイトで1文字1円以下で雇われたライターが医療情報の裏取りまでできるわけがない。ましてや、「学術的専門知識」など持ち合わせているわけもないですよね。
もし数人の専門家を内部に囲っていたとしても、毎日100件の規模で量産する記事までチェックできるわけがありません(ノーチェックであったことが明らかになりましたよね)。
また、キュレーターにはモノ・情報を扱う責任が伴うのはもちろん、名声も付いてきます。なので、本来は「個人名」で勝負する役職になります。森美術館のキュレーター・片岡真実さんはよくメディアにも取り上げられるので、アートに造詣の深い人はご存じでしょう。
さて、昨今大規模炎上中のキュレーションサイト()で責任を負うのは誰か?
クレジットは「◯◯編集部」です。緊急時のプレスリリースすら「◯◯編集部」から出されていました。もはや責任逃れを考えて構築したモデルであることは明確じゃないですか。
キュレーションに絶対不可欠なものは何か?
引用の明記など形式的なものはありますが、究極的に必要不可欠なものは、作家と作品へのリスペクトです。このリスペクトがあってはじめてキュレーションと言えます。
これについては、ITコンサルタントでありインフルエンサーの永江一石さんも同じことをおっしゃっていました。完璧に同意です。
本来の意味である美術・アートの世界におけるキュレーションとは、美術館という箱の中に見たこともない世界を作り上げていく行為です。
作家のクレジットを明記し、展示方法をともに議論し、作家(個人だったり複数だったり)とキュレーターが協働して表現を模索し、新しい価値を創造します。
ときには作家すら気が付かなかった作品の新たな側面がキュレーターの手腕によって日の目をみることすらあります。
ワクワクしますよね!
キュレーションサイト()はキュレーションをしているのか?
さて昨今のキュレーションサイト()におけるキュレーションにこのリスペクトがあるでしょうか?
無断転載あたりまえ、クレジットは付けない、語尾を「~かもしれない」「~だそうです」に変えてパクリをバレないようにする、google様のペナをかわすことに頭脳を使う、各所から寄せ集めてオリジナル性を薄める、被リンク扱いになって検索上位が上がらないようにnofollowにする……
個人名は出さずに「◯◯編集部」というクレジットで責任を逃れようとする、文章作家であるライターさんに全責任をなすりつけようとする、超薄給で記事を量産させる、そのくせ利益は限界まで吸い上げる……
情報弱者をピンポイントで突く、不安な気持ちを煽る、見たいものしか見ない心理を利用する、薄く中身はないが検索上位に上がるために無駄にボリュームを増やす、量産量産……
キュレーションサイト()が行っているのがキュレーションでないことは明らかですよね?
運営者の利益しか生み出さないし、世界から消えても僕たちに何も悪影響がない。
世界からWelqが消えたなら
— ずかん@シングルファザー (@suzukizukan) 2016年12月1日
何か起こった?(このパロディはパクりなのだろうか?)
雨後の筍、ブラックハットSEO請負人
キュレーションサイト()業界は今強烈な浄化作用が働いています。
しかし、運営者側は実名で活動しているわけではなく、法人という性質上責任の追求範囲も限られ、DeNAが潰れたとしてもただ名前を変えて蘇ってくるのだと思います。ワラワラと。
雨後の筍、あるいはゾンビ、アンデッドですよ。
ヨッピー @yoppymodel さんがぶっ潰したBUZZNEWS社員がDeNA Palette立上げに参画していたと。ブラックSEO請負人がいて、社名やPJ名だけ変えて、結局は潰してもゾンビみたいに湧いてくるってことですよね。https://t.co/8JLXAJE4oH
— ずかん@シングルファザー (@suzukizukan) 2016年12月1日
なぜなら、儲かりますからね。
儲かるから、ブラックハットSEO(悪いことをしてネットで見られやすくなるような施策をする)請負人が暗躍しているわけです。体を叩いても、悪い頭脳は次の体に憑依していくだけ。
もっと強烈に根本的に浄化されることを期待します。
今こそキュレーションの本来の意味に立ち返るとき
というわけで、昨今目にするキュレーションサイト()なんてキュレーションもなんにもしてません。パクリ記事量産工場です。
一流大学を卒業した頭脳が、ただただ情報弱者からお金を吸い上げることに使われているということに愕然とします。
NAVERまとめを運営するLINEが一次情報発信者にインセンティブが還元される仕組みを導入すると打ちだしました。
LINEは12月5日、運営するキュレーションプラットフォーム「NAVERまとめ」の運営方針を変更すると発表した。まとめられた1次情報発信者にインセンティブが還元される仕組みを2017年中に導入する。
ランク付けの仕組みなど課題は多いと思いますが、一次情報発信者にきちんと利益(お金や名声)が還元される仕組みができることを期待しています。
そして「キュレーション」という言葉を用いる以上、一次情報者(作家)とキュレーターの両者にメリットがあり、正確な情報を扱っており、誰も見たことのないような新しい価値を生むメディアになってくれることを願っています。
キュレーションを知るには美術館に行こう!
さて、最後は爽やかに〆ましょう。
本来のキュレーションの意味とその価値を知りたい方は、ぜひ美術館に行ってみることをオススメします。
なお、事前にサイトでキュレーター名を確認しキュレーションの意図を理解した上で足を運ぶと、いつもより二倍楽しい美術鑑賞体験ができますよ。
おしまい!
★不格好経営
1999年の創業以来DeNAがぶち当たってきた数々の壁、それを乗り越えるためにどう奮闘したか。そういった内容が熱量の込められた(かつ、ざっくばらんな)口調で綴られています。
DeNAの歴史を知る上での必読の書。かなり生々しく、キュレーションサイト騒動も一連の流れで見ることができます。
DeNAに限定せず、ITベンチャーのスピード感と経営の生っぽさが感じられるという点でも良書です。
2016.12.12 追記
IT業界で働いたことすらないシングルファザーですが、インターネットの未来について書いてみました。 → さよならインターネット拡大期|DeNA本「不格好経営」とキュレーションサイトWelqのパクリ騒動を受けて


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