牧村朝子『百合のリアル』書評|レズを公開し女性と結婚したミス日本ファイナリスト

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『百合のリアル』読みました。この本は、ほんっっっっっとに良書。絶賛オススメします ★★★★★

そもそもなぜこのような読者を選ぶようなタイトルの本を読んだのか? なぜそんなにオススメするのか? って話ですよね。

こんな理由です。

 シングルファザーとして「性別ってなんぞや?」と考える機会が多い

 セックスとしての性は現代人の基礎教養だと思う

 セクシュアルマイノリティだけではなく、対人関係全般についてのヒントが書いてある

いい意味でタイトルをズバッと裏切られたので、ちょっと紹介させてください。

目次

『百合のリアル』の著者は、レズビアンをカミングアウトしたミス日本ファイナリスト、牧村朝子さん

牧村朝子さんのお名前、実は存じ上げていませんでした。

この本のレーベルである青海社新書さんは、「武器としての教養」をテーマにエッジの立った新書を作っています。何冊か刺さるものがあったので、その流れとして本書を手に取りました。

もちろん、先に述べたようにシングルファザーとして性別を考えたいというアンテナがあってこそです。

「まきむぅ」こと牧村朝子さん

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(↑ 公式サイトより)

牧村朝子

タレント・レズビアンライフサポーター。1987年生まれ。2010年、ミス日本ファイナリスト選出をきっかけに、杉本彩が代表を務める芸能事務所「オフィス彩」に所属。TV番組で自身がレズビアンであることをカミングアウトして以来、レズビアンライフサポーターを名乗り、各種媒体に出演・執筆をしている。日本で出会ったフランス人女性と婚約後、フランスの法律に則って国際同性結婚をし、現在はパリ在住。

百合のリアル|牧村朝子

経歴だけで社会的苦労が耐えなかったんだろうなぁと想像できますね……^^;

本書でも、まわりからのセクシュアルマイノリティへの偏見だけではなく、「わたしは一体ナニモノなのか?」というアイデンティティの葛藤が長くあったことが書いてあります。

そもそも、タイトルの「百合(ゆり)」ってなんぞや?

そもそも「百合ってなんぞや?」という人もたくさんいると思うので、まずはその説明から。

ゆり【百合】

①ユリ科の多年草、主に、ユリ科の鱗茎(球根)植物を指す。

②女性同士の同性愛を指す言葉。

百合のリアル|牧村朝子

一般的に言うと「レズビアン」の隠語です。

牧村さんはミス日本ファイナリストになりタレント活動もする中で、自身がレズビアンであるということを公表しました。

そんな牧村朝子さんが『百合のリアル』で綴る、性の多様性

タレントでもありミス日本ファイナリスト。メディアへの露出もあり、ご自身がレズビアンであることを社会に向けて公表することはとても勇気のいることではなかったかと思います。

パリで国際同性婚した著者が語る、「女の子同士」のリアル

私は、女性として生まれ、最愛の妻と結婚をしました。同性愛者は“少数派”です。しかし、決して“少数”ではありません。自身が同性愛者であることを公表する人も増え、LGBT、セクシュアルマイノリティの知識は、現代人の基礎教養となりつつあります。女の子同士はどこで出会うの? どうやってセックスをするの? 家族へのカミングアウトはいつ? 同性同士の結婚って可能なの? 私の経験からお話できることのすべてを、この一冊に凝縮しました。私と一緒に、「性」と「知」の冒険に出ませんか? あなたの“百合観”変わりますよ。

百合のリアル|牧村朝子

百合の世界には「百合萌え」という言葉があるとのこと。

BLや百合など言葉は知っていても、同性愛に萌える気持ちは僕はわからないのですが、性の多様性だったり、どんな価値観を持っている人間がいるのかということには、教養として大いに興味があります。

その意味で、本書はタブーとされる性についての視野を広げてくれる稀有なものでした。

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『百合のリアル』は、タブーとされてきた「セックスとしての性」に光をあてる

セクシュアルマイノリティというカテゴリーで一括りにはできない、こんなにたくさんの性の在りかたがあるんだなぁ……! と驚きました。

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大前提として、「セックス」と「ジェンダー」の違い

「一億層活躍社会」として、女性の社会進出が声高に叫ばれていますよね。根強く残る性別間の給与格差や就労環境の差などについて、撤廃を目指して様々な活動が行われています。これらは、「ジェンダー」としての性別の垣根をなくすることを目的としています。

ここで簡単に「セックス」と「ジェンダー」の違いについて書いておきますね。

セックス :生物学的性別(メス/オス)

ジェンダー:社会的性別 ( 女/男 )

体のつくりや遺伝子の差異など器質的区分を「セックス」、“男は仕事、女は家庭”のように社会的役割での区分を「ジェンダー」と言います。

『百合のリアル』は「セックスとしての性」の多様性を書いた本

「ジェンダーとしての性」については、高度経済成長が成熟期にあった1980年代より語られています。小倉千加子さんや上野千鶴子さんのお名前は聞いたことがある人が多いかもしれません。

ただし、「セックスとしての性」については、そもそも隠すべきもの(タブー)としての認識が日本人には強い。医学的・気質的な裏付けがとれてきたこともあり、ようやく近年になって語られるようになってきました。

ゆえに、LGBTsや性同一性障害などが表立ってメディアで語られるようになったのはここ数年ではないかと思います。

最近も大学院生のアウティング(本人の了解を得ずに、公にしていない性的指向や性自認等の秘密を暴露すること)による自殺がニュースになっていました。バレることが自殺につながるほど、日本社会ではセクシュアルマイノリティが認められていない、ということです。

『百合のリアル』の内容を一部紹介

本書のなかの文章を一部紹介しますね。

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「正しいセクシュアリティの分類」なんて、実は存在しない

p111-

(前略)よくこういうご質問をいただきます。

「私はレズビアンでしょうか?」

自分の分類が知りたい、誰かに分類してもらいたい……そういう想いからくるご質問だと思います。わたしは基本的に、こうお答えすることにしています。

「それを決めるのはわたしでもお医者様でも誰でもなく、あなた自身ですよ」

(中略)自分で選び取った名前は「アイデンティティ」となり、他人につけられた名前は「カテゴリ」となります。

著者の牧村朝子さん自身、他人の付けられた「カテゴリ」にあてはまらない自分に悩んだそうです。たくさんの「半カテゴリ半アイデンティティ」の変換のすえ、最終的に「自分」というアイデンティティを見つけたエピソードが書いてありました。

「レズビアンってどうやってセックスするの?」という問い

p170-

「レズビアンってどうやってセックスするの?」

この質問に「一概には言えないわ」という回答をされても、たぶんすっきりしない人がいると思います。だって、言い換えるとこれ多分、「男性器なしでどうやってセックスするの?」って聞きたいんですものね。「ゲイってどうやってセックスするの?」という質問をあまり聞かないのが、その証拠だと思います。

「男性器をどこかに挿入すること=セックス」という前提があるから、こういう質問が出てくるのではないでしょうか。

耳が痛いところですね……^^;

男性に限らず、女性でもこの前提はあるんじゃないかとも思います。植え付けられたものとして……ね。

当方、(おそらく)ヘテロセクシュアルのオス/男ですが、「男性器をどこかに挿入すること=セックス」というわけではないというのは、とてもよくわかります。

器から札へ

p214

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『器から札へ』。これが本書のハイライトです。性的マイノリティへの眼差しだけではなく、対人関係全般に通じる見方です。

「この目線で相手を見ることができれば、世界は平和になるだろうなぁ」

本心でそう思ったので、次の段落にて少し詳しく書いていきます。

『百合のリアル』の本質は、レズなど性的マイノリティの話を超えたところにある

上の図で示されているのは、「相手をひとつの器に入れる」のではなく、「相手を一個人として認めた上で、多様なアイデンティティの札を認める」ということです。「カテゴリ思考」から「タグ思考」へ、と言い換えてもいいかもしれません。

異性愛者、同性愛者、レズビアン、ゆとり、ニート……などなど、わたしたちはラベルを貼っていくことで相手を認識しますが、そのラベルが「器(カテゴリ)」か「札(タグ)」かでは、相手の見方がまったく異なるのはご理解いただけるかと思います。

本書は主にセクシュアルマイノリティについて「相手のありのままを見ることの大切さ」を説いていますが、これは対人関係全般について言えることです。

親子関係を「器から札へ」

親を「自分のことなんて絶対にわかってくれない人」という器に入れて、もはや関係が断絶状態の人もいるかもしれません。

子どもを「優しく言っても言うことを聞かない子」という器に入れて、端から怒りのメッセージで伝えることが普通になってしまっているかもしれません。

夫婦関係を「器から札へ」

夫のことを「仕事だけで家庭のことは絶対にやってくれない人」という器に入れて、いい部分には目を向けられなくなっているかもしれません。

妻のことを「家事をやっても小言しか返してこない人」という器に入れて、愛するということを忘れてしまっているかもしれません。

会社の対人関係を「器から札へ」

上司のことを「自己保身ばかりで言うこともテキトーで信用ならない人」という器に入れて、仕事を調整してくれていることへの感謝を忘れているかもしれません。

部下のことを「ゆとり世代」という器に入れて、成果を見もせずに小言を言っちゃってるかもしれません。

器で考えることからは、なかなか逃れられないけれど……

上記のような耳の痛い話、誰でもあると思います。相手を器に閉じ込めてしまうことから逃れるのはなかなかに難しいです。

しかし、それ以外の相手の見方、本書で説かれている「札(タグ)」という眼差しがあることを理解しているだけで、少しだけ相手に優しく慣れるんじゃないかなぁ、なんて思ってます。

『百合のリアル』のタイトルに物怖じしないでね! 超オススメです!

牧村朝子さんのTwitterをフォローしているわけでもなく、まったく前知識なしで『百合のリアル』を読みました。

が、セクシュアルマイノリティの教養に加えて、ここまで書いてきたように人間への眼差しという意味でとても気付きのある本でした。

『百合のリアル』という一見わかりづらいタイトルについて

タイトルと内容に乖離があるのでは? という声もあります。

たしかに内容から言えば『セクシュアルマイノリティのすべて』といったタイトルのほうが即しているのかもしれませんが、著者としては、「レズバレを防ぎたかった」という想いがあったようです。

本屋さんで購入するときに、店員さんの目を気にして買えない人がでてくるのが嫌だ、と。

確かに、レズビアンで悩む人がレズビアンとタイトルに書かれた本を買うのは抵抗があるかもしれませんね。著者自身の体験からくる優しさを感じます。

マンガと会話とコラムで構成

本書はマンガと会話とコラムの3つで構成されています。こんな感じです。

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読みやすく理解しやすいです。

現代人の基礎教養として、『百合のリアル』でセクシュアルマイノリティを学びましょう

というわけで、まきむぅこと牧村朝子さんの『百合のリアル』、現代人の基礎教養としてオススメします! ★★★★★

プラスアルファの2冊

著者の牧村さんについて描かれたこちらのコミックエッセイも必読です。これはほんと良かった。ほんとに。

★★★★★

牧村さん執筆の新刊もでてますね。同じ青海社新書より。未読ですが、読みます。

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